Home > 地球・宇宙そして大気 > 空気の押す力化か、それとも真空の引く力か

空気の押す力化か、それとも真空の引く力か

高いところの水を汲み出す力

siphon-water.png

図のように昔から私たちは水を汲み出してきました。
水はある程度の高さの壁を超えて汲み出すことができます。
サイフォン効果といいます。
しかし、どの程度の高さの壁を超えることができるのでしょうか。
この限界の高さはかなり以前から知られておりました。
水面よりおよそ10m程度が限界で、それ以上高い壁は越えることができません。
10mを超える深い井戸の水は昔ながらのポンプでは汲み出せないのです。

ガリレオは真空の引く力と考えた

ガリレオは、サイフォン効果の高さの限界は真空の力の限界と考えました。
パイプの両端から流れ出ようとする水は、パイプの中に真空を作るように力が働き、真空の力が水を引き寄せ、長いほうのパイプの水の量が多く、重いため、そちらに引っ張られる、と考えたのです。
引く力、真空の吸う力こそが水を汲み出す力だ、という考えです。,br /> しかし、壁の高さが10mを超えると、真空の力・吸う力が負けてしまうため、水がパイプの両端から流れ出してしまうというのです。
ガリレオの考えによれば、10mが真空の力とバランスする高さということになります。

トリチェリは水面を押す力、空気の重さと考えた

torr-03.png

水が超えることができる壁の高さの限界は、水を入れたチューブ(片側が閉じている)を逆さに水面に立てたときの高さと同じことがいろいろな実験で確かめられました。
エヴァンジェリスタ・トリチェリ(Evangelista Torricelli, グレゴリオ暦1608年10月15日 - グレゴリオ暦1647年10月25日)は、実感を簡単にするために、水ではなく、もっと重い液体・水銀を使うことにします。
水銀の高さは左の図のように760mmになりました。

空気の重さであることの証明:先端の大きさと形の影響

torr-02.png

そこで、トリチェリは次の実験をします。
先端の大きさや形を変えて水銀柱の高さがどう変わるか調べたのです。
結果は、形、大きさの影響を受けることなく、すべて、760mmという高さでした。
水銀柱の上部にできる真空の大きさが、水銀柱を引き上げているとすれば、形や大きさで、水銀柱の高さが変化するはずです。
これは、真空の引く力ではなく、空気の重さによる押す力が、水銀柱の高さや水が10mの壁を超える力を生み出していることの証明となりました。

真理を決定づけるボイルの実験

torr-04.png

トリチェリはガリレオが死ぬ前のほんの数か月、ともに実験をして、多大な影響を受けましたが、もう一人、若者がガリレオとの出会いで、大きな影響を受けます。ボイル・シャルルの法則で有名なロバート・ボイルです。
ロバート・ボイル(Robert Boyle、1627年1月25日 - 1691年12月30日)はアイルランド・リズモア出身の貴族。近代科学の祖とされることが多い。
これは、ボイルが執筆した論文を、古典的な対話形式でなく、現代のように、普通の言葉で説明した最初の人だったことも、理由として考えられます。
ともかく、ボイルがガリレオと会ったときはまだ16才の若者でしたが、トリチェリの実験がヨーロッパ中に伝えられると、彼は、トリチェリの実験では、まだ不明瞭さを感じ、さらに次の究実験をするのです。

空気が水面を押す力を証明したボイルの実験

トリチェリの実験で、サイフォン効果が空気の重さによる押す力であることを証明できたとボイル自身は考えましたが、
すべての人を完全に納得させる明瞭さには、まだ欠けるところがあると感じたのです。
ちょうどそのころ容器を真空に排気する真空ポンプがドイツ人オットー・フォン・ゲーリケによって発明されると、
人を雇って、その改良機の制作に取り掛かります。
ボイルの実験は、見事な内容で、見る者すべてを十分に納得させるだけの明瞭さを持っていました。
彼は、実験装置全体をガラス容器の中に入れてしまったのです。
それは、容器の中の空気を真空ポンプ吸い出すという実験でした。
そして、彼が真空ポンプで容器から空気を排気すると水銀柱は徐々に下がっていったのです。
水銀柱の上部にできる真空の力は、周りの空気を抜き取っても、逆に加圧して入れても、変わりません。
しかし、容器の空気がなくなれば、空気が水銀の液面を押す力は、大きく変化します。
そして、実験の結果は明瞭でした。まさに、水銀液面を押す空気の量と水銀柱の高さは連動して動いたのです。
排気すると、水銀柱は徐々に下がり、空気を戻すと、水銀柱の高さももとに戻ったのです。
驚くべきことでした。
760mmHG=1Torr
長く圧力の単位として、トリチェリの名前からとったTorrが使われたのは、この実験が大きな影響を与えてのことでしょう。

カテゴリ: 地球・宇宙そして大気 , 空気の不思議