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コロンブスは船を西ではなく南に向けた

マルコポーロの刺激:東洋の豊かさへの憧れ

コロンブスの時代は、前世紀にマルコポーロがあらわした東方見聞録による東洋の豊かさへの憧れと
十字軍の疲弊が終わり、ルネッサンスの明るい兆しから、
人々の目は、外に向かい始め、何か新しい積極的な気分が社会に芽生えていました。

東洋への冒険を阻むもの

東洋の富を手に入れるには、マルコポーロと同じ陸路をらくだで旅するのではなく、
船による大量の輸送こそがカギとなることは誰の目にも明らかです。
しかし、問題は、船で、東に向かって航海しインド、中国に行くためには、アフリカ大陸が行く手をふさいでいます。
東に向かうのではなく、西に向かう航海・・・
ここにカギがあるのはわかっていますが、だれも成し遂げた人はいないのです。

西向きの航海は未知であるばかりか、危険に満ちていた

西向きの航海をだれも成し遂げていないのには、いくつかの理由がありました。
ポルトガルの帆船が見つけたアゾレス諸島を除くと、イベリア半島は世界の西の果て。
その先は伝説の世界なのです。
多くの人が西に向かって航海しましたが、西への航海は危険がつきまとっていたのです。
西に向かうと、間もなく激しい突風に行く手を阻まれ、荒れ狂う海の恐怖を味わうことになるのです。
行く手を遮る激しい風がいつも西から吹いてくる。

コロンブスはスペイン国王の支援を得ることに成功

コロンブスは苦労の末、ついにフェルナンド5世とイザベラ1世の支援を取りつけたのだ。
船も航海に必要な資金も調達できた。
この時代、長い航海に出るといっても、せいぜい1か月の航海という時代に、コロンブスが積み込んだ食料は1年分だったというから、この旅に予想した困難さがわかります。
船乗りたちにとっても、生きて帰れないかもしれない、という恐怖との戦いの航海になるのです。

西への旅なのに南へ向かう

1492年8月3日早朝、サンタ・マリア号。ピンタ号。ニーニャ号の一隻はついに出航したのです。
それも、西に向かってではなく、南に向かって船をすすめたのです。
これこそが、コロンブスが秘かに抱いていた計画であり、
この航海を成功に導いた重大なポイントでした。

カナリヤ諸島へ

コロンブスは以前の航海で、カナリヤ諸島を越えるたびに東風を感じていたのです。
本当に吹くのか、いつまで吹くのか、どこまで吹くのか。それはわかっていない。けれども、知る限り、いつも東風が吹いていた。これに航海の命運をかけたのです。
東風が吹いてくれるか、それはわからなかったけれども、この風を捕まえる以外に彼に勝算はなかった。
カナリヤ諸島で食料の補給をし、ついに西に向かって船を進める時が来たのです。(東風とは、東から西へ吹く風です。風の場合、風の源のある方向を風向きとします。)
9月8日のことです。

運命の東風

東風は、穏やかに、けれども強く吹き続けました。コロンブスの期待の何倍も具合の良い風でした。
平均で8ノット、一日300km近く進むことができました。驚くべき風です。

西へ進み過ぎることの不安

しかし、あまりにも具合が良すぎて、逆に、船乗りたちは不安を感じることになります。
こんな風に何日も押されて船を進めたら、どうやって戻ることができるだろうか?
船乗りたちは、進めば進むほど、不安を感じないではいられなかったのです。
コロンブスは進んだ距離を少なめに記録して、少しでも不安を感じさせないように努めなければなりませんでした。

陸地発見

そして、ついに10月12日、彼方に陸地を発見するのです。
8月3日に出帆して2か月余り。
コロンブスがとらえたこの風こそ、そののちの大航海時代の貿易を支えたことから貿易風と呼ばれることになるのです。
赤道近くを吹く絶え間なく穏やかな東風です。

帰り道は偏西風に吹かれて命からがら

帰途に就くコロンブス一行は、今度は、いままで西への航海を阻んできた、よく知られている激しい西風に乗って帰ることになります。
北緯40度付近を吹く激しい西風。
西への旅は、南に向かって出発し、赤道付近を西に向かいましたが、今度は北へ船を向け、この西風をとらえたのです。
貿易風の東風は穏やかに、そしてそれなりに強く吹く風ですが、帰りの西風は、船を沈めんばかりの激しさだとコロンブスに日記に記しています。
この風こそ偏西風です。
地球を東から西に向かって吹く風、貿易風、そして東から西に向かって吹く風、偏西風。
北半球、南半球とも同じ緯度で同じように風が吹きます。
コロンブスの発見したものは、アメリカ大陸だけではありません。
まだ、それと気づかずに利用しただけに過ぎないので、発見とまでは言えないかもしれませんが。
この二つの風があって初めて、彼の航海は成功したのです。

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