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手術前に十分検討すべきこと

脊索腫や軟骨肉腫の治療方法を選択する場合に最も大切なことは、
1.あらゆる可能性を考えた上で、 2.長期的な視点から、 3.この病気をきちんと完治させるためにはどうすべきか という考え方です。

腫瘍を摘出できたからといって、完治と言えないことがある

こうした難治性の頭蓋底腫瘍は、手術で全摘出された後でも、
再発が認められることが しばしばあります。

したがって、
「まず、手術でできるだけ摘出して、残った部分については、そのとき考えましょう」、
「全摘出できれば、その先のことは再 発したときに考えましょう」
という考え方では、
最終的にきちんと完治させることができるとは思えません。

手術は治療戦略の第一段階と考えて、完治に向けた最善の方法を決定する

つまり、行き当たりばったりの治療ではなく
、一連 の治療戦略を立てて、
その、まず第一段階としての手術という観点から、手術方法を選択することが大切になります。

外科的に腫瘍を摘出する場合には、
腫瘍が 全摘出できる場合でも、
摘出後に腫瘍が存在していた部分に対し、適切な後処置を行うことで
再発のリスクを減らすことができます。

また、腫瘍の全摘出が困難 な場合でも、
絶対に傷つけてはいけない構造と、
ある程度危険をおかしても、完治させるためには絶対に摘出しておかなければいけない部分とをはっきり認識して手術に臨む必要があります。

脊索腫・軟骨肉腫に対する治療法の選択:

さらに、長時間をかけてでも一度の手術で摘出しておいた方がいい場合と、
複数回に分けて手術をした方がいい場合などもありま す。
これらは、
患者さまの現在の症状、
腫瘍の存在部位や大きさ、
周辺神経や血管との関係、
さらに、今回が初めての治療であるのか、再発であるのか、
現在ま でに行われた治療の経緯などによって、様々です。

手術の方法について

開頭で顕微鏡下に手術を行なった方がいいのか、
経鼻的に内視鏡下に手術を行った方が いいのかについても、
それぞれの患者さまで異なります。

脊索腫や軟骨肉腫に対する手術については、
大きく分けて、
開頭(頭を開ける)による方法と
経鼻(鼻の穴から到達する)
での方法があります。

内視鏡を用いて経鼻的に手術を選択する

しかしながら、近年の当科での経験をもとに考えると、
多くの患者さまで、内視鏡を用いて経鼻的に手術を行った方が、
安全かつ効果的に治療をすすめることができるように思います。

従来の開頭手術の利点

従来、頭蓋骨を大きく開頭し、
脳を圧迫しながら到達する経頭蓋底手術が主に施行されていました。
この手術では、広い術野を展開できることから、
手術がやり易いという利点が ありました。

開頭手術の大きな欠点

しかしながら、もともと脳の深部から発生し、
中心にある様々な神経や血管を内側から外側へと圧迫しながら増大するこうした腫瘍に対し、
外側か ら到達しなければならないため、
中の腫瘍を切除するためには、
間にあるこれら大切な解剖構造物をひっぱったり、時には切断したりする必要性に迫られまし た。

このため、開頭による手術では、
様々な脳神経を損傷せざるをえないところがあり、
合併症の危険性がかなり危惧されてきました。

開頭手術の問題点は、これ以外にもあります。
通常これらの腫瘍は
脳の一番底面で、硬膜というしっかりとした膜で脳と隔てられているため、
腫瘍がかなり大きくなってしまった場合でも、
これらの膜を突き破って脳の中へと侵入してくることは比較的まれです。
しかしながら、開頭術では、“防御壁”ともいうべき硬膜を破らないと、
腫瘍に到 達し摘出することができません。
つまり、一回の開頭手術で腫瘍が全摘出され、
順調に完治させる方向にいけばいいのですが、
腫瘍が残存した場合には、
せっかくバリアーとなって、脳への進入を抑えているこの隔壁を壊してしまうので、
残存腫瘍の脳内への進入を助長してしまう可能性があります。

経鼻手術を選択する大きな理由

以上より、一般的に は、脳の中心部にある腫瘍に対し、
外から内へと到達する開頭手術よりは、内側から到達できる経鼻手術の方が、
手術の効果や安全性、再治療のやり易さからしても、圧倒的に優れているといえます。

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