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結核と免疫の働き

結核は過去の病気?

結核は、日本などの先進国では、過去の病気として、人々の中では忘れられつつあります。
しかし、結核は医療技術の発展にも関わらず、天然痘のように消え去ることはなく、むしろ勢力を盛り返しつつあります。


結核は現在も大きな脅威

世界全体では、2004年には、死亡率および罹患率は慢性活動性の患者が1460万人、890万人の患者が発症し、160万人が死亡しました。その患者の大部分は発展途上国ですが、先進国においても、免疫抑制剤を使用している患者やエイズの患者、薬物乱用などによって増大しつつあります。


結核の発症

結核を患っている人がくしゃみをすると、菌が空中にばら撒かれます。
細菌は軽いので空中を漂います。ほとんどの菌は漂っているうちに、空中で死んでしまいます。
ところがたまたま、他の人が吸い込んだ空気中に結核菌がいると、鼻やのどで止まらずに肺にまで入り込んでしまうことがあります。
もちろん、結核菌を吸い込んだからといって簡単に結核になるわけではありません。
わたしたちの身体には、外部からの細菌を撃退する免疫機能があるからです。
体内に入り込んだ結核菌はマクロファージが見つけ出して、これを食べてしまいます。
マクロファージは結核菌ばかりか、外部からの細菌、異物を貪欲に捕食し、マクロファージの細胞内で分解してしまいます。
通常は外部から侵入した細菌、ウイルスはこのように免疫システムの防御機構の働きで破壊され、排出されてしまいます。
食べられた結核菌はマクロファージの中で消化酵素により、分解されますが、結核菌もマクロファージの中で複製を始めます。
消化を逃れた一部の菌の中に、マクロファージの消化機構に対して耐性を獲得してしまうことがまれにあります。
この菌が厄介なことになります。


生き残った結核菌の増殖と蔓延の仕組み

耐性をもった結核菌は、逆にマクロファージを食料としてしまいます。
マクロファージの中で複製を作り、数を増します。
増殖した結核菌は、ついにマクロファージを破壊してしまいます。
耐性を持った大量の結核菌がマクロファージを破壊して体内にばら撒かれることになるのです。
最悪のシナリオ・悪循環が始まります。
ばら撒かれた結核菌に対して、大量のマクロファージが動員され、菌を捕食します。
捕食したマクロファージの中で、菌の分解とともに、菌の複製もおこなわれ、マクロファージの分解が勝利することもありますが、マクロファージが餌になり、菌が大量にばら撒かれるケースも発生します。


破壊屋キラーT細胞の働き

マクロファージが放出する化学物質はT細胞を活性化します。
T細胞は発信源のマクロファージを追跡して、見つけると、マクロファージの表面に非自己の痕跡を探します。
「非自己」を発見すると、キラーT細胞は可溶性たんぱくのサイトカインを放出します。

  1. サイトカインは肺の感染部分にたくさんのマクロファージを呼び寄せます。
  2. サイトカインは集まったマクロファージを活性化し、他に行かないように、そこに定着させます。
  3. マクロファージは捕食性が著しく活性化し、結核菌を激しく取り込み破壊します。
  4. マクロファージは結核菌が感染した部分の周辺の損傷を受けた組織も破壊します。これは通常は感染が広がらないために有効なことです。健全な組織を守ることになるからです。
  5. マクロファージは脳に信号を送ります。脳は細菌と戦うため、体温を上げます。いわゆる発熱が起こります
  6. うまくいけば、結核菌を殺し、健康を取り戻すことができます。
    うまくいかない場合は、結核菌が肺に残り、菌の増殖が続きます。発熱も続き、マクロファージが菌と菌に損傷された肺の組織を破壊し続けることになります。
    これが結核の発症なのです。


    結核菌ではなくT細胞

    普通は、結核菌によって、肺がぼろぼろにされてしまうと考えられています、実は、そうではないのです。
    T細胞が、結核菌を殺そうとして、殺しきれないため、破壊力を強め、結核菌だけでなく、結果的に自分自身の組織・肺をより強力に破壊してしまう。
    しかも、悪いことに、もはや結核菌を完全に殺すことはできないほどに菌は増殖し蔓延した段階になっています。
    そのため、T細胞は攻撃の手を緩めることはなく、結核菌が存在する以上、肺組織を破壊し続けることになるのです。
    私たちの生命、身体を病原菌やウイルスから守るはずの免疫が、実は、複雑な仕組みの中で、自分自身の組織を攻撃し、破壊してしまうのです。
    抵抗し、守るという意味の抗体がいつの間にか自分自身を攻撃する攻体として機能してしまうのです。
    免疫システムにはこのような側面もあるのです。
    これが結核の実態なのです。

    カテゴリ: 免疫の働き