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過敏症(アレルギー)の原因は血液にあった

過敏症になりやすいモルモット

実験室でもっとも過敏症を起こさせやすい動物がモルモットです。
卵白のような無害なものでも、一度接種して免疫し、二度目に接種すると、数分後には落ち着きを失い、目や鼻をこすり始めます。
そのうちに、呼吸困難に陥り、毛が逆立ち、失禁や排糞し、呼吸困難のため激しく喘ぎ、血圧の低下、体温の低下が起こり、不整脈などの症状を呈し、脳は酸欠状態になります。
放っておけば、おそらく間もなく死んでしまうでしょう。
このような症状で死んだモルモットを解剖すると、肺の内部が組織液と空気でいっぱいに膨れ上がり、肺の形さえも歪んでしまっています。


呼吸困難:気管支閉塞

このようにして死んだモルモットの重要な特徴は気管支がふさがってしまっていることです。
空気を吸うことはできても、吐き出すことはできない状態なのです。
吸うときは横隔膜の動きで肺を膨らませ、肺の中の圧力を下げることで、気管支がふさがっていても、なんとか空気を吸い込めます。
ところが、吐くときの力は肺をすぼめるだけで、ふさがった気管支を広げて吐きだすほどの力にはならないのです。
吸うことができても、吐き出すことができないのは、このような呼吸器の構造的な特徴です。
これは、気管支が炎症を起こして狭くなっている喘息の場合も同じで、吸うことはできても、吐き出すことが困難なのです。
これらの症状は、イソギンチャクの毒の接種で、アナフィラキシーを起こして死んだイヌの症状と同じです。


動物に起こることはヒトにも起こる

動物実験で起こったこれらの事件はショッキングですが、それは動物の世界のことで、人間には起こらないと多くの研究者は考えていたのです。
こんな恐ろしいことが人間にも起こりえるということが受け入れがたかったのだと推測されます。
しかし、1921年ドイツ人の二人の研究者の実験は、動物に起こることは、人間にも起こるのだという事実をはっきりと証明して見せたのです。
アレルギーをもっていないカール・プラウスニッツと白身の魚でアレルギー症状を起こすアレルギーをもっているハインツ・クストナーの共同研究は、まさに自分たちの身体をはった研究でした。
最初、アレルギーをもっているクストナーに白身の魚の抽出液を少量注射してみました。
すると、最初蚊に刺されたような膨れができ、どんどん腫れが大きくなりました。
かゆみが全身に広がり、せき込み始め、呼吸も苦しくなってきたのです。
幸い注射した魚の抽出液は少量でしたから、20分程度で症状は治まり、正常に戻りました。


次に、彼らが行ったのは、アレルギーのないプラウスニッツにも同じように魚の抽出液を注射してみることでした。
変化を観察しても、プラウスニッツには何事も起こりません。
注射する量を増やし、繰り返し注射しても、何事も起こらなかったのです。


日をおいて、今度は、プラウスニッツに、アレルギーをもつクストナーの血清を注射しました。そして、翌日、血清を注射されたプラウスニッツに魚の抽出液を注射してみたのです。

いったい、どうなったでしょうか。

プラウスニッツの腕は膨れが起き、かゆみが全身に広がり、呼吸が苦しくなって、クストナーのアレルギー症状がプラウスニッツにも同じように現れたのです。


アレルギーの原因は血清の中にある物質

二人の研究の成果は重要なものです。
この発見がその後のアレルギー研究の基礎になりました。
というのは、この時点ではアレルギーの原因物質を特定できていませんでしたが、血清の中にある「何者か」がアレルギーの原因であるということをはっきり示したのです。
血液と一緒に体の中をめぐっている何か、クストナーの血清の中にある何かがアレルギー症状を起こしたのです。
これが抗原抗体反応であることもはっきりしていたので、原因となる抗体探しが始まりました。
アレルギーを起こす原因抗体、後にIgE抗体と命名されますが、日本人研究者の石坂博士夫妻によって分離抽出されます。それは1966年のことです。


もう一つ、付け加えておくと、ほんの少量の血液を採取すれば、アレルギーの検査ができますが、それは、この発見をもとに、改良を加え、アレルギーの検査法として完成したものです。

カテゴリ: 免疫の働き