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アナフィラキシーから始まった

免疫機能のうちにある危険な部分

遺伝子のうちのたった一つの欠陥が重篤な免疫不全を起こし、生命を維持できな程の致命的な症状を引き起こすという事実は免疫機能のうちにひそむ危険性を暗示しています。
免疫機能の一連の発見は、生体防御システムとして驚くばかりの巧妙さの発見でもあったため、研究の多くは、巧妙さの仕組みの方に向けられ、潜在する危険性に注意を向ける人はいませんでした。


毒に対する過敏反応の発見:アナフィラキシー

1902年のこと、毒の成分の研究をしていたチャールス・リチェットとポール・ポーティエは。いろいろな実験動物にイソギンチャクの毒を注射し、抗体の産生の様子などを調べていました。
あるとき、一度毒を注射したイヌに、約1ヶ月後、再び同じ毒を少量注射したところ、イヌは突然、嘔吐、下痢、前足を痙攣させ、立っていることができなくなり、間もなく意識を失い、およそ1時間半後には死んでしまいました。
あまりにも衝撃的な出来事で、二人は茫然としてしまいますが、同じ実験をしてみると、やはり、同じことが起きることがわかりました。
たまたま起こったのではなく、再現性があるのです。
最初、彼らが、この毒にはイヌの体内の組織を変化させてしまう特別な毒性があると考えたのも無理はありませんでした。
彼らは、この症状を「無防備」を意味する「アナフィラキシー」と名づけました。
チャールズ・リチェットはこの研究がもとになり、のちにノーベル賞を受賞します。


無毒なものにも過敏反応がある

ところが、翌年別の研究者によって、まったく毒性のない、卵白のようなたんぱく質でも、一度注射して免疫し、その後、繰り返して注射すると同じように過敏な反応をすることを発見しました。


毒が原因ではなく、「繰り返し」に原因

注射したものが毒でなくても、同じように過敏な反応をするということは、考え方をまったく変えなければなりません。
多くの研究者が追試を行い、これが、特定の抗原に対する抗体の特異的な過敏反応であることが確かめられました。
毒性のものだけでなく、無毒のものに対しても、免疫に用いた特定の抗原に対して過敏な応答をするという事実は、これまでの免疫についての考え方とまったく違う事実でした。
免疫の研究者を混乱させ、困惑させました。「受け入れることが困難」な事実なのです。
免疫は、ヒトを外界の異物・病原菌から守る障壁となるものと考えられてきたのに、免疫が、毒でないものによって繰り返し刺激されると、当の本人を攻撃し、死にまでも至らしめてしまう。
免疫の中の過敏症、アレルギーが前面に現れてきた瞬間です。

カテゴリ: 免疫の働き