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イェルネのネットワーク説:抗体はすでに準備されている

抗体分子の数

「ひとりの人間の中に存在する抗体分子は、ばらばらに存在するのではなく、お互いに反応しあいながら、ひとつのネットワークを形成している。」と提唱したのは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫学の孤高の理論家ニールス・カイ・イェルネ(Niels Kaj Jerne、1911年12月23日 - 1994年10月7日)です。
人間一人の中には、約2兆個もの抗体分子があるといわれており、もし、それを取り出して重さを計るなら、およそ1kgにもなるということです。
それは、なんと脳細胞よりも多いというのです。
それほどの数の抗体分子が、侵入してくるかもしれないが、侵入してこないかもしれないウイルスなどの抗原に備えて、事前に準備されているというのが、ネットワーク説の考えです。
数千万種にも及ぶと考えられているる抗原の違いを抗体が識別し、捕えることができるのも、なるほどとうなずけるほどの数、種類の備えです。


抗原に対応する抗体はすでに用意されている

イェルネによれば、数千万種類の抗体分子がネットワークを作って、外部からの新しい侵入に備え、監視しているのが免疫システムであるということです。
抗原を認識する抗体は、それぞれ独自の立体構造をもっています。
新しく抗体が作られると、それは新しい構造を持つ分子であるため、免疫系にとって、異物に他ならないことになります。異物として作られた抗体分子は、免疫系にとって新たな存在であるから、それを抗原とする新たな抗体が作り出されます。そして、新しく作られた抗体を免疫系はまたも異物とみなし、それに対応する抗体を産生するという無限の連鎖反応を生み出しているのです。
このように終わることなく、前の抗体を抗原として結びつく抗体が作られ続けることによって、無限ループのように抗体を抗原とする抗体が生み出され、それがネットワークとなっているとイエルネは説明します。

無限のバラエティを生み出すのはネットワークの無限ループ

まらばらに無数の抗体があるのではなく、抗原と抗体の関係で結びついた分子の大きなネットワークが形成されている。<br /> 全体としては一つでも、構成員の個々の部分は抗体として異物を認識する能力をもった抗体ですから、どんな異物にもネットワークの中のどれかが対応することになるということになります。
イェルネの考えの大きな特徴は、抗原が侵入してから、抗原の構造を分析して、対応する抗体が設計され作られるのではなく、ネットワークの中に、すでに存在しているということです。
ウイルスなどの新たな抗原が侵入してきたとき、侵入を認識し、型を調べ、その型に合った抗体をつくる、そんな悠長なことでは、間に合わないではないか。
抗体は事前に作られて、準備しているのだ。
抗原が侵入してきたとき、免疫系はすでに用意されているネットワークの抗体群の中から、適切なものが選び出されるだけなのだ。
選び出された抗体は、同じものがすぐに大量に増産され、抗原と結びつき、抗原を破壊、撃退しているのだ、というのです。

カテゴリ: 免疫の働き