Home > 抗原と抗体 > 抗原・抗体反応:異物ってなに?・怪獣キメラのおはなし

抗原・抗体反応:異物ってなに?・怪獣キメラのおはなし

怪物キメラ

ホメロス(イーリアス)によると、怪物キメラは頭はライオン、身体は山羊、尾は蛇からできていて、怪力をもち、凶暴に暴れまわる怪物であるとされています。
ベレロフォンは、この怪物を退治するために、鉛の塊をつけた槍をもって、ペガサスに乗り天空から襲いかかります。
迎え撃つキメラが、まさに口から炎を吐こうとした瞬間、ベレロフォンは、鉛の槍をキメラの口の中に打ち込みます。
炎で溶けた鉛がキメラの口をふさいでしまい、キメラは窒息して息絶えてしまうのです。
キメラの父は巨人デュポン、母は蝮の下半身を持つ美女エキトナといわれ、エジプトのピラミッドとともに有名なスフィンクスも、キメラの兄弟とされます。

日本にもあるキメラ伝説

実は、日本にも似た話があるのです。
源頼政による鵺退治(ぬえたいじ)として知られている話で、
仁平年間(1151年~1154年)近衛天皇が、ひどくうなされる夜が続いていたある日の丑の刻に、
警護の者が、「ヒョーヒョー」と変な音を聞き警戒を強めていると、,br /> 東三条の森から黒雲がわき出て、紫宸殿の上を覆い尽くす光景を目撃します。
そこで近衛天皇は、源頼政に、その原因をつかみ退治するように命じます。
源頼政は、神明神社に大願成就の祈願を行い、紫宸殿を覆う黒雲の中で動く影に向かって、
「南無八幡大菩薩」と念じ矢を放ったといいます。
すると、矢は見事に命中し、妖怪は奇怪な声をあげ、庭先に落ちてきたということです。
怪物の姿は、頭が猿、胴体は狸、尻尾は蛇、手足は虎だったといいます。
(平家物語第四巻)

抗体とキメラ

抗体と抗原の話に、なんでこんな怪物が登場してくるのか疑問に思われるでしょう。
人間をはじめ、一つの動物の身体に別の生き物が一緒に存在することは異常なことで、あり得ないことを私たちは知っていました。
ですから、あり得ない、存在するはずのない異種混合の生き物は怪物・妖怪で恐ろしいもの、この世のものではない、退治すべきものなのです。
人間の体の中に、人間でないものが存在することは異常なことであり、あってはいけないことだと考えられてきた歴史があるのです。

移植ができない理由

昔から闇の世界では、ある生き物の身体に、
別の生き物からとった身体の一部を移植するような実験が行われてきました。
しかし、それらの企ては、ことごとく失敗に終わりました。
それは、移植された他の動物の器官を免疫系が異物と判断し、拒絶してしまうからです。
拒絶反応として、よく知られている現象です。
異なる二種類以上の生き物が一つの生命となることはできないことなのです。

異物を排除する免疫の働き

免疫の発見から、かなりの期間、免疫とは「二度なし」、一度罹った病気に、二度罹らないことと思われてきましたが、
免疫の機能が解明されるにつれ、免疫とは単に病気に二度罹らない、伝染病から私たちを守るということは、本質的な機能ではないことがわかってきました。
免疫とは、自分以外のものを異物として排除する、自分以外のものが体内に入り込むことを許さない防御システムなのです。
外部からの侵入者を記憶して、二度目の侵入には速やかに反応して排除する侵入防止が免疫の機能であり、
私たちの身体の中に他の動物の器官の一部を移植することを拒む機能も、人間がキメラにならないための、外部から別の生命が侵入してくることを防御する機能なのです。
伝説のキメラのようなことだけでなく、免疫の防御機能は、人間と病原菌、人間とウイルスのキメラも許しません。
侵入してきた病原菌やウイルスは免疫によって拒絶され、退治され、排除されてしまうのです。
この免疫機能があるため、私たちは健康で、生活することができるのです。
もし、免疫の機能がなかったら、いつの間にか私たちはウイルスや菌、あるいはほかの生命体に身体を支配されたキメラになっていたのではないかと思われます。

カテゴリ: 抗原と抗体