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抗体以外の免疫機能の発見

ファブリキウス嚢への興味から思わぬ展開に

ブルース・グリックはオハイオ州立大学院生だったとき、あることに興味を持ち、実験をしてみることを思いついた。
それは、鳥類に特有の臓器ファブリキウス嚢が何の働きをしているのか調べてみたいということでした。
彼の時代(1950年代)、まだファブリキウス嚢が何のためにあるのか、どんな働きをしているのか、まったく知られていなかったためです。
ブルース・グリックは手近な鳥類といことで、ニワトリを使い、まず、片っぱしから、ファブリキウス嚢を摘出してしまいます。
そして、ニワトリにどんな変化が起こるのか観察を始めました。
ところが、残念なことに、グリッグがいくら観察しても、ファブリキウス嚢を摘出したニワトリに変化は起きませんでした。それでグリッグは、実験を諦めて、ニワトリを動物保管所に返却してしまったのです。

偶然か・運命か

同じく大学院生だったトニー・チャンは、自分が講師を務める授業で、抗体の産生実験を学生に見せることになり、彼も動物を使って実験することになります。
運命というか、偶然というか、チャンが抗体産生実験のために取り寄せたニワトリは、グリッグがファブリキウス嚢をとりだしたニワトリだったのです。
そのため、トニー・チャンが学生の前で行った実験は、悲惨な結果に終わります。
抗体を作る実験だったのに、そのニワトリが抗体をまったく作り出さなかったのです。
その当時まだ知られていませんでしたが、鳥類の抗体はファブリキウス嚢でを作り出されるのです。
抗体を作る能力がまったくないニワトリを使って抗体をつくる実験をしたのですから、トニー・チャンは学生の前で、大恥をかいてしましました。

なぜ抗体ができなかったのか追跡実験から重大な事実が見えた

大恥をかいたトニー・チャンから情報を得たグリッグは、その後、追跡実験を行い、2つの重大な情報を発見します。。
1.ファブリキウス嚢が抗体の産生に必要ということ
2.抗体がないのに、ウイルス感染しても回復し、皮膚の移植にも、ちゃんと拒絶反応がある
つまり、抗体がないのに、正常な免疫反応があるということです。
この実験結果をグリックは論文にしますが、当時はこの結果に注目する人は誰もいませんでした。
投稿したにも関わらず、Science誌はこの論文の掲載を却下します。時代に相手にされなかったのです。「免疫=抗体」と信じて疑わなかった時代は、それ以外の事実に目を向けることができなかったのです。
その時代には受け入れられませんでしたが、グリッグの発見の重大さに変わりはありません。

免疫は抗体だけではなかった

この発見は、私たちの身体には抗体とは別の、まだ知られていない免疫機能の存在を暗示していました。
免疫についての歴史的な大発見であり、今までの考え方を根本から変えるような重大な事実・情報の価値に、まだ誰も気づかなかったのです。

カテゴリ: 免疫発見とその歴史