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伝染病発生の歴史:天然痘の場合

新しい病気の発生

知られていない病気が人類に突然発生することがあります。
AIDSは古くからあった病気ではありません。
1981年にUCLAの医師ミカエル・ゴトリーブによって報告されたのが最初です。
しかし、AIDSはまたたく間に、人類を恐怖に落とし入れるほどの勢いで感染者を増やしています。
長いこと人類を苦しめてきた代表的な病気の一つである天然痘が、
いつ人類に入ったのかは不明ですが、
エジプトのミイラ・ラメセス5世の顔や体には、天然痘の、
それも強毒性の天然痘とされる痕跡があります。
また、マルクス・アウレリウスの死因は天然痘であったといわれています。

なぜ、天然痘は人類で大きく広がったのか

エジプトのミイラやマルクス・アウレリウスが天然痘を患ったとはいえ、
古代のいろいろな情報を見ても、人類を恐怖に遅しいれるほど多くの人が天然痘に感染した様子はありません。
牛に牛痘という伝染病が古くから知られており、この伝染病は遺伝子レベルでは、人間の天然痘のウイルスと非常に近いことが知られています。
家畜の病気の牛痘がヒトに感染し、変異を起こして、ヒトからヒトへの伝染性と強毒性を獲得して、天然痘ウイルスとなったのではないかという推測がされています。
最近では、鳥インフルエンザがヒトへ感染し、強毒化したことはよく知られています。
東南アジアやメキシコなどでは、ヒトからヒトへの感染もあったようでした。それでも、大きく拡大することはなく、ひとまず防げたようです。
現代は、鳥インフルエンザのウイルスの遺伝子的な特徴や伝染の仕方などよくわかっていますが、天然痘が人類に猛威をふるっていた時代には、病気が何によって引き起こされるのかまったく理解されていませんでした。
ウイルスの存在自体知られていなかったのですから、感染予防などまったくできませんでした。
感染の拡大を防ぐ知恵を私たちは持っていなかったのです。

天然痘が大流行するきっかけ

はじめエジプトや中東で天然痘が発生したと考えられています。
その天然痘ウイルスが、ヨーロッパにもたらされたのは、十字軍の帰還かムーア人の侵攻のときではないかと考えられています。
人の大移動に伴い、ウイルスも一緒に移動したのです。感染者やウイルスの保有者が移動するのですから。
エジプトや中東では、牛痘などのウイルスで、免疫を持った人たちが多く存在し、天然痘は穏やかな伝染をしていたのですが、牛痘の免疫をもたない人々で構成されているヨーロッパに、天然痘ウイルスがもたらされりと、伝染性と強毒性を獲得し、爆発的な流行となったのです。
またたく間にヨーロッパ全土が恐怖に包まれることになります。
17,18世紀のヨーロッパでは毎年40万人とも50万人ともいわれる死者を出したのです。
患者の数は、死者の数倍ということですから、大変な数です。
ペストと天然痘という二大伝染病は、ヨーロッパの歴史を変えるほどの影響を与えたのです。

カテゴリ: 免疫発見とその歴史