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重症複合型免疫不全症・SCID治療法の望み:遺伝子治療

SCIDの治療への期待

1990年代になると、SCIDの治療環境は大きく変わりました。
遺伝子工学の台頭です。
アメリカ国立保健研究所はADA-SCIDというデービッドとは別のタイプの免疫不全症の原因である欠陥ADA遺伝子への遺伝子治療にGOサインを出したのです。
従来の免疫療法や薬や手術といった医療手段は遺伝子欠陥という問題には無力でしたが、遺伝子そのもののが治療できるとなれば、話は別です。


遺伝子治療法の概要

治療方法は大まかに次のような内容です。
治療の10日ほど前に、患者の抹消血液を採取し、採取した血液から遺伝子に異常があるヘルパーT細胞を分離、取り除きます。
次にヒトの正常なADA発現するADA遺伝子をレトロウイルスを使ったベクターによって、患者のヘルパーT細胞に導入します。
マウスに白血病を起こさせるレトロウイルスが正常な遺伝子の導入に使われるのです。
このレトロウイルスの自己複製機能、増殖機能を取り除き、取り除いた部分にはヒトの正常なADA遺伝子を組み込んだものです。
このレトロウイルスは増殖はできないものの、感染力はあり、細胞に感染することによって、細胞核内に侵入し、細胞のDNAと融合し、正常なADA遺伝子を侵入した細胞の遺伝子に組み込むことになります。
これが遺伝子治療の大まかな内容です。


最初の遺伝子治療

この方法による遺伝子治療は1990年9月14日、ADA-SCIDのアシャンティ・デシルバという4歳の女の子に対して実施されました。
これが、人類史上初めての遺伝子治療となったのです。
遺伝子工学により、欠陥のあるADA遺伝子を正常なADA遺伝子と置き換えたT細胞は注射器で普通に静脈に注射されます。
最初のケースでは、副作用はまったくなく、数時間微熱が続いただけで、治まったのです。
期間をおいて、6回の注射により、彼女のT細胞はAIDS患者並みの1ミリリットルあたり50個のレベルから、正常値の1ミリリットル1250個まで回復しました。
まさに彼女は正常になったのです。


遺伝子治療は始まったばかり

このときの方法では、T細胞は外来の抗原にとって刺激を受けないと、数週間で寿命がなくなってしまうため、繰り返し注射が必要でした。
大きな成功ではありますが、目に見える問題、その他まだそのときには見えてなかった問題も抱えていたのです。
そして、問題点は徐々に明らかになってきます。

カテゴリ: 遺伝子治療