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AIDSの発見・特殊なウイルスHIV

AIDSは後天性の免疫不全症

後天性の免疫不全で、今や誰でも知っており、身近な問題となているのは、AIDSです。
AIDSは後天性免疫不全症候群と呼ばれ、AIDSウイルスによって起こります。
遺伝子の欠陥によって発症する重症複合型麺栄不全症(SCID)と同じように、病原菌に対する抵抗力を失ってしまうのがこの病気の大きな特徴です。


AIDSの発見のいきさつ

AIDSの発見は1981年にUCLAの医師ミカエル・ゴトリーブが報告したホモセクシャルの5人の男性に発症したカリニ肺炎がきっかけです。
カリニ肺炎はニューモシスチス・カリニという病原菌で起こりますが、この病原菌自体はそれほど珍しい菌ではありません。
というのは、この菌は多くの健康な人が微量に持っている普通に見られる菌なのです。
この菌が体内にあっても、普通は何も起こりません。
この菌があってもカリニ肺炎を起こすことはまずありえないのです。
まれにカリニ肺炎を発症するのは、がんの治療や臓器移植のために免疫を抑制しているときに、免疫系が正常に機能していないという極めて特殊な状況のときに限られています。
このように、通常体内にあっても何も病気を起こさないが、免疫系が機能しなくなるとあらわれてくるような菌を日和見病原菌といいます。
この極めてまれなカリニ肺炎という病気が5人の集団で見つかったことにゴトリーブは驚いたのです。
ゴトリーブは何か特別な異常を感じて、流行病を監視するアメリカ防疫センターにこのことを報告しました。


AIDSの集団的な発生

ゴトリーブの報告から、間もなく、彼が報告したのと同じようにカリニ肺炎を患うホモセクシャルの男性数十人が発見されたのです。
この中には、カリニ肺炎のほかカポジ肉腫を患う人もいました。
カポジ肉腫は、カリニ肺炎と同じく日和見病原菌です。
この一連の発見の結果、これらのホモセクシャルの男性の病気は、AIDSと呼ばれ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ウイルスによて発症する病気で、免疫系を破壊してしまう恐ろしい病気であることが明らかになったのです。


AIDSのウイルス・HIVはレトロウイルスの一種

AIDS患者の症状は極めて悲惨な状況でした。
免疫不全に陥っているのですから、あらゆる感染症に無防備な状態なのです。
しかしAIDS患者からHIVウイルス単離され、HIVウイルスが同定されたとき、このウイルスはレトロウイルスの一種であることがわかります。
研究者たちは、ほっと一息ついたのです。
研究者にとっては、レトロウイルスはとくに珍しいものではありません。
ですから、発見されたAIDS患者の症状は極めて深刻だが、治療薬や治療法はすぐに見つかると考えたのです。
AIDSは大きな問題にはならないという考えが大半でした。


AIDSのウイルス・HIVの恐ろしさ:変化するウイルス

間もなくウイルスの恐るべき性質が明らかになります。
それは、AIDS患者から単離した19のHIVウイルスのうち18が異なる抗原性を持っていることが判明したのです。
これは、ウイルスが極めて変化しやすいことを示しています。
もし、このうちの一つのウイルスのためにワクチンを開発しても、
それが完成するころには、ウイルスは姿を変え、別の抗原性を持つようになっていると考えられるのです。
ウイルスが別の抗原性を持てば、開発したワクチンはまったく役に立たないことを意味してるのです。
完成したワクチンは過去のウイルスには有効でも、変化してしまったウイルスにはまったく効果がないのです。
大きな問題になることはないという楽観視は、ウイルスの性質が明らかになったことで、状況は一変しました。
AIDS患者の症状は極めて深刻で、新たな患者は次々と発見され、しかも治療法は突然見えなくなってしまったのです。


インフルエンザの予防接種をしたのに、今年の流行は型が違うから、効果がない、という話をよく聞きます。AIDSのウイルスに起こる変化で、ワクチンが使えなくなる問題はこれと同じことです。型が違えば、ワクチンは役に立ちません。

*カリニ肺炎は現在はニューモスチス肺炎と呼ばれています。

カテゴリ: 免疫の働き