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DDTによる人体の汚染

DDT・dichloro-diphenyl-trichloroethane

1874年ドイツの化学者によってはじめて合成されました。
もともとは化学戦のために研究されたといわれています。
その後、1934年にDDtに殺虫効果が発見されたのです。
昆虫媒介による病気を防ぐ目的で、また作物の害虫退治の目的で、もてはやされ、DDTは大量に使われました。
戦後の日本でもシラミ退治の目的で使われ、駐留軍によって、学童の頭からDDTが吹き付けられる様子の映像がときどきテレビでも流れます。
このような使われ方をしたため、DDTは人体に無害であるという印象を多くの人に与えました。
そして殺虫効果の発見者スイス人のパウル・ミュラーはその功績によりノーベル賞を受賞したのです。


DDTの安全神話

学童の頭からDDTが吹き付けられるようなことは、今日では考えられませんが、幸い粉末のDDTは皮膚から侵入しにくく、その時点では大きな問題にはなりませんでした。
皮膚から侵入しにくいことが安全な殺虫剤という印象を植え付けるのに、一役買ったかもしれません。


DDTの危険性:はがされた仮面

DDTの性質は、油脂の存在で一変します。
DDTは油に溶け、溶けたDDTはいろいろなものと一緒に体内に取り込まれ、体内の脂肪に、脂肪の多い器官に蓄積されるのです。
蓄積される代表的な器官は副腎、甲状腺、睾丸などです。
DDTは代謝されずに長く体内に蓄積します。
代謝されにくいため、減少するのではなく、濃縮されるのがDDTの特徴の一つです。
食べ物に0.1ppm含まれていると、体内では10-15ppmと100倍程度に濃縮されます。
食物連鎖の頂点にいる人間はDDTをはじめとする化学薬品の濃縮器として機能します。
そして動物実験では3ppm-5ppmで肝臓の障害、心筋の障害が認められているのです。
過去に大量に散布されたDDTは、のちに発がん性などの毒性が問題になり、使用禁止になりましたが、いまだに母乳から検出され、環境からも検出されています。
日本では1971年に製造、使用がともに禁止されました。


DDT汚染の蔓延

時すでに遅しです。
驚くべきことに、日本やアメリカなどばかりでなく、北極圏に住むイヌイットの人たちの中から現在も高濃度のDDTが検出されているのです。
現在では、世界でDDTに汚染されていない人間は一人もいないと考えられています。
アマゾンの奥地に行っても、エベレストの頂上に行っても、北極や南極に行っても、そこにもすでに汚染が及んでいるのです。


母乳のDDT汚染・胎児の発育障害

DDTの製造と使用が禁止された理由は、発がん性もさることながら、DDTに汚染された野生生物に生殖器異常、生殖異常が多く表れたためです。
現在とくに心配されているのが胎児のDDT汚染、母乳のDDT汚染です。
DDTなどのホルモン攪乱物質が胎児の正常な発育に障害となる危険性があるためです。
環境は、一度、化学薬品に汚染されると、もはや取り除くことができません。
河川や地下水を通して海を汚染し、今では北極圏の海水、アザラシなどからDDTが検出されています。


安全性の確認かそれとも危険の確認か

カーソンが指摘しているのは、このような危険な化学薬品が安全性のチェックなしに、無思慮に大量散布されていることに対する警告なのです。
化学薬品工業が次々に作り出し、売り出す殺虫剤をはじめとする化学薬品は、安全性の確認なしに販売、使用され続けたのです。
危険性の証明をしなければ、販売、使用を止めることはできません。
危険性を指摘する声はあったのですが、企業、政治の力に押し切られました。
本来は安全性を証明して、初めて、化学医薬品は世に出されるべきです。
現実の世界では安全は後回しなのです。
今日もまた、新たな化学薬品が工場から出荷されていきます。
危険が証明されるまで、だれもこれを止めることはできません。
DDT散布の結果、目の前で多くの鳥や野生動物や家畜が死んでも、「危険性はない」と言い続けてきた人間の愚かさが取り返しのつかない事態を招いています。
DDTは発がん性、ホルモンかく乱、その他の毒性が問題視されています。
1940年代からの無思慮な行為が2000年代の多くの人のがんの原因、様々な病気の原因となっている可能性があるのです。

カテゴリ: 環境破壊